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| 伊那谷屈指の蕎麦の名店であり、遥々と関東圏や中京圏から蕎麦通らがめざす存在、それが「丸富」です。同店は今から10年ほど前に、養命酒のふるさと長野県駒ヶ根市にお店を構えました。中央アルプスの麓、清らかな空気と水に恵まれる同地と蕎麦との結び目について店主の宮島秀幸さんに伺いました。 |

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駒ヶ根の自然が息づく無二の蕎麦 『丸富』編 その1 |
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編集部:以前は南信の飯田の駅前にお店があったそうですね。お店の移転先としてこの場所を選んだ理由は何だったのでしょう?
宮島さん:先々代より47年間営んだ店を閉め、駒ヶ根高原に越してきたのが今から約10年前。それまで使う水は水道水だったので、打った蕎麦が痛んでしまうなど蕎麦にとって決して良い環境とはいえなかった。移転するなら環境がいいところをといろいろと見て回るなかでこの地に巡り会ったのです。
商売に欠かせない水ですが、この辺りは少し掘れば水が出ることは知人から聞いていましたし、寂とした森、空気のおいしさも決め手となりました。実際に水脈は豊富で、この辺りの家は井戸水がほとんどで十数メートルも掘れば水が出る人もいれば、そこまで掘らなくても水が湧くところもあります。うちは商売柄、確実に水を確保できるように50mの深さの井戸を掘りました。
聞くところによると今の水は100年前に中央アルプスに降った雨や雪が砂礫層をくぐり抜けてきたのだとか。仮にそうなら、この先100年は水の心配はいらないわけです。(笑)
編集部:店を移転してから、ご自身のなかで気がつく変化はありますか?
宮島さん:水と空気がおいしい、この場所に店を構えて10年あまり。移転してきてから植えた樹々も随分と成長しました。いま思うのは草木や花の匂い、鳥のさえずりや風が運ぶ季節の気配といった自然そのものと一緒に蕎麦を打つということはとても大事なことだということ。私のイメージからすると、蕎麦というものは周りのものを取り込んでいく、そんな食べ物です。
飲食業全体を眺めてみると、どちらかというと人がつねに上位にいて、素材はあくまで管理される側という印象をもってしまうのですが、私にとっての蕎麦は、その素材のなかに自分自身が入っていく感じ。あくまで蕎麦の方が自分よりも上位にいて、自分を含めてそばを打つ環境そのものを取り込んでいくものなのだと・・・。都会の蕎麦屋さんと私たちとは商いのかたちは違うとは思うけど、10年を経て、その考えに確信を持てるようになりました。
編集部:ワインでいうところのテロワール。やはり気候や風土、そこに生きる人間の営みが蕎麦にはっきりと現れるわけですね?
宮島さん:蕎麦にしろ、野菜にしろ、ここに移転してきて、こう考えるようになりました。『素材の声に耳を傾ける。素材のもっている特徴を大切にして、お客様にそれを伝えよう』と。ただそれだけでいいのかなと。そのための技術とかはあるわけだけど、最も肝心なのは素材のもっている、「いのちの濃さ」みたいなものをどうやってお客様に伝えるか。
蕎麦自体が有するいのちの力を、いかに削らずにお客様にお出しするのか。そのことを自分自身だけでなく、周りから感じるもののなかに学んでいくことが何よりも大事だと思うようになりました。ナチュラルな志向といえばカンタンだけど、こうした感覚が街にいる頃と比べて変わってきましたね。
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その2へ続く
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